僕は引っ込み思案で、思春期のころはヤバいほどの自意識過剰をこじらせて生きてきた。20代後半まで、洋服を自分で買ったことがなかったし、中学1年生の最初の投稿日に筆記用具を忘れて、となりの同級生に鉛筆を借りようと声をかけた時には思わず口から敬語が出てきた。
大学では、「ぼっち」でメシを食うのが恥ずかしくて、3駅離れた駅まで移動してご飯を食べてた時期もある。
自分の要求を他人に伝えるのに慣れてなくて、ギクシャクしてしまうのを悟られたくなくて、何についても踏ん切りが悪い。一度逡巡してしまうと、そのことも恥ずかしいのですぐに諦めて、最初から何も興味がなかったフリをしてしまう。
「やったことのないことをやってみること」が極端に苦手なので、1人旅とかなんかは「誰が好んでするものか」というタイプである。テレビゲームですら、同じゲームばかり何度もやるようなタイプなのだ。
20代の中頃。そんな僕を見るに見かねて、父親が航空券をくれたことがある。「溜まったマイレージがあるんだけど、もうすぐ有効期限がくる。家族なら使えるから、チケットを取りなさい」と。
普段積極的に僕にどうこう言ってくることのない父が、20代半ばで「親と同居/フリーター/サブカルクソ野郎」の僕に、「ちょっとの間でも家を出なさい」と背中を押してくれたのである。
今から思えばありがたすぎて涙が出てくる話だが、当時の僕としては、1人旅などしたくなかった。マイレージの表か何かをネットで見て、何故か不機嫌に、「じゃあ石垣島でいいよ」と。東京から一番遠いから。本当はシンガポールぐらいまで行けたんだけど、海外に行くのは怖いから。2月なのに、沖縄。「夏の沖縄に行きまくった上級者」でもないのに、石垣島。この、季節外れ感はなかなかに味わい深い。
そんな旅行について、思い出して書いてみる。
もう多分15年ぐらい前だ。メモも日記も写真もない。でも、いくつかのエピソードは覚えてる。多少ウソまじりになるだろうけど、僕にとってはもはやこの記憶が真実だから仕方がない。
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1日目:石垣島到着
旅行には、事前にホテルの予約をした程度で、それ以上の準備は何もしていなかった。多分、「旅行を楽しみにしてる自分」というものを誰かに見られるのが恥ずかしかったのだろう。誰も見やしないのに、「誰かにバレる前提」で行動を考える自意識クソ野郎である。だったら、誰も見ていないところでガイドブックなりを見ればいいのだが、そんなのはムリ。「楽しみにじゃないフリをして実は楽しみ」みたいなことがバレるのが一番恥ずかしい。
そんなわけで、ガイドブックをチェックすることもなく、飛行機に乗り込んだ僕。飛行機の中で聴いたJ-POPが胸にしみたな。なんというか、「寂しくて、誰かに甘えたがってる」みたいなことって、普段気づかないようにしてるのに、何かの隙に胸に忍び込んでくるものなのだ。
那覇を経由して石垣島に午後到着。すぐにホテルにチェックイン。まずは、空港についてから乗ったバスで見た港に行ってみよう。歩いて3分ぐらいだし。
閑散とした港につくと、そこに1日ツアーを扱うようなフェリー切符売り場が複数ある。僕は、その中の1つに目をつけた。「西表島」だ。
西表島、知ってる! 聞いたことある! 手塚治虫の「ブラックジャック」で、ブラックジャックが威張ったオッサンよりイリオモテヤマネコの治療を優先してオッサンをキレさせたエピソード、あった気がする! 行ってみたい! ていうか、石垣島から西表島行けるんだ! フェリーで1時間ぐらい? 日帰りできる!
みたいに思って、僕としてはかなり勇気を出して店に飛び込んでみた。「あの、西表島の1日ツアーみたいなやつ、今から申し込んで、明日行けますか?」聞いてみると、案外いい返事が帰ってこない。ちょっと考えれば実は当然のことで、僕1人を連れてツアーを組むわけにいかないし、かと言って他のツアーはすでに予約などが終わっている。
「そうですね・・・ 明日も何組か団体さんの予約があるので、その空いた席に入れ込むような形でもよろしいですか?」
正直、よろしくない。仲のいい団体客に、1人だけ混ざり込む勇気はない。これも知ってるぞ。岩井俊二の「リリィ・シュシュのすべて」のはじめの方だな。なんか謎の男が、少年たちの団体に混ざり込んでた、アレだな。
でも自分から行きたいと言っておいて「他の団体と一緒ならイヤ。気の弱いおひとり様を10人集めた団体じゃないとムリ」なんて言う本音を伝える勇気もなく、「はい、大丈夫です」と答える。
「じゃあ、明日8時15分発のフェリーがあるので、7時55分にまた来てください。こっちで団体さんに聞いておきますので」と。
ここで一時退散。とりあえず、明日になるまで保留だ。保留、大好き。
その後僕は、レンタカーを借りてみた。3日間のレンタル。翌日に西表島に1日ツアーに行くつもりなのだから、借りるとしても翌々日に借りればいい、とも思うが、そんなことを考える余裕はない。油断すると、平気で何もせずに5泊6日ぐらい過ごせてしまう。
レンタカーを借りて、免許をとってそれほど経っていなかった僕は初心者マークを付けた。少しその辺を運転。道は混んでなくて、初心者でも怖くなかった。ただ、街灯はあまりなかった気がする。夜になると怖いので、早々に退散。ホテルの駐車場に車を停めて、1日目は終了である。
↓引っ込み思案の僕が、1人旅をした話(沖縄編)リンク↓
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