鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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【高齢者よ、幸せを誇れ!】母のバイオリン発表会に行ったら、涙が止まらなかった話

今週のお題「おかあさん」に寄せて

 

母が60歳を超えたばかりの時に、バイオリンを習い始めた。その前もポピュラーピアノだとか、ウクレレだとかを断続的に習ったりしていた。音楽が好きで習い始めて、初心者から初中級ぐらいまで上達すると(そこから上手くなるのは多分結構大変だからか)、あまり長続きせずやめてしまう。しばらくすると友達に誘われたりしてまた習い始める、というようなことを母は繰り返していた。

 

それが、バイオリンを始めると聞いて、少し驚いた。バイオリンは、楽器の値段としても、習得の難易度としても、少しハードルが高いようなイメージがあったからだ。

 

聞くと、自治体の主催する高齢者サークルだから、初心者用のバイオリンのレンタルもあるし、会費もとても安いらしい。「私なんて、シルバーになったばかりだから一番若いわよ」なんて、「高齢者あるある」みたいなことを言って、張り切って通っていた。

 

バイオリンの前はマジックだった。母は出演しなかったけど、発表会に誘われて、子ども2人を連れて見に行った。高齢者でいっぱいの客席。舞台に交代で出てきて、マジックを披露する高齢者たち。登場前に、演者を紹介するアナウンスがすごかった。

 

「次の登場は、○○さん。ボケ防止にマジックを70歳から習い始めたところ、面白くてやめられなくなったそうです。73歳になった今年は、このステージに初挑戦。これからも、先輩方を見習って、ますます腕を磨きたいと意気込みを語ってくださいました」とか。真面目そうなおじいさんが、(真面目だからと思うけど)妙にハデな衣装を着て登場した時には、「いいもの見たな」とか思った。

 

「次の登場は、○○さん。実は、去年の夏には、ご病気で手術を受けました。今年の発表会には出られないかと思ったそうですが、今日の舞台を励みにして、一生懸命にリハビリに励んだそうです。果たして、どんなマジックを見せてくれるのでしょうか?」とか。会場、大拍手である。もう、舞台に登場しただけでマジックじゃないか。

 

中には、「独自の世界観」で、マジックというより「洋楽に乗せた日本舞踊みたいな何か」を披露する方もいらっしゃったりして、「いくつになっても、目立とう精神ってあるものだな。なんかすごいな」と圧倒された記憶がある。

 

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そのマジックの発表会から、僕は「高齢者の発表会」のファンになった。だから、母がバイオリンの発表会に誘ってくれた時も、やはり子どもを連れて聴きに行くことにした。高齢者センターの、大広間、みたいなところが会場だ。

 

僕は、ヤジ馬根性で、なんとなく面白がる気持ちも少しあって、そんな気持ちで会場を見渡した。やはり、高齢者でいっぱいだ。マジックの時よりも、ややお金持ちっぽい雰囲気の人が多い気がする。やっぱり、バイオリンだからか。

 

そして、発表会のスタート。マジックと違うのは、演者紹介のアナウンスがないことと、30人ぐらいの高齢者(ほとんどおばあちゃん)が、いっぺんに舞台に立つこと、である。母は、自分の言っていたとおりに一番若い。

 

僕は、やはり圧倒された。弓が震えて、ビブラートの効きまくった「荒城の月」を聴きながら、「なんか、この年になったら、もう美人とか不美人とかそういう尺度じゃなくて、やっぱり性格というか、人生というか、顔や立ち姿に刻まれてくるな」みたいな、そんなようなやや不謹慎なことを感じたりしながら、幽玄な響きを楽しんだ。

 

バイオリンは、当然あまり上手じゃない方がほとんどなんだけど、真剣に弾いてることが伝わってくる。母が言ってた「周りも私もあんまり上手じゃないから、途中でズレると元に戻れなくなる」みたいなことのようだ。

 

そして、発表会最後の曲は、「ユー・レイズ・ミー・アップ」(荒川静香さんが、トリノの時にエキシビションで使った曲だそうです)。母いわく、「これはみんな好きだから結構上手なのよ」と。

 

多分、事実は少しだけ違った。皆さんが上手なのではなく、発表会の最後の曲なので、先生も主旋律で演奏に加わるのだ。僕は、この先生の演奏態度に感動してしまった。バイオリン初心者の母たちを、励まし導くような、指揮をしているような、わかりやすい弓使い。先生(おそらく40代の、いかにもバイオリンを教えそうな、きっぱりした明るい雰囲気の女性)が表情と、バイオリンの音で、出演者たちをリードしていることが分かる。

 

「この曲は、こういうメロディーですよ」と、周囲にきっぱりと伝えることが、ここでできる最大限の励ましなんじゃないか。そうすれば、周りも安心して、精一杯演奏できる。ひょっとしたら、僕らは高齢者に、そんなふうに関わったらいいのではないか。

 

僕は、どこかの小学校などを通るとき、あまり上手でない合唱を耳にするのが好きだ。中途半端に上手な合唱だと、アラが目立ってしまうというか、曲の好き嫌いを気にしてしまうというか。でも、あまり上手でない、不揃いなコーラスを聞くと、曲のことは気にならなくなる。ものすごく大げさな言葉で言うと、「ただひたすら、一生懸命な祈りの波動が直接伝わってくる」ような気がするのだ。

 

この、「ユー・レイズ・ミー・アップ」の時もそうだった。失礼ながらあまり上手でない合奏を聞いて、ただ、一生懸命さだけがストレートに伝わってくる気がして、琴線に触れたのである。涙が止まらなかった。

 

母よ。高齢者たちよ。頼むから、一生懸命バイオリンを弾いてくれ。年を取って、いろんなことが思うようにならずに、悔しい思いをすることもあるだろう。今の僕が想像できないぐらい、死ぬのは怖いだろう。それでももし、幸せを感じる時があるなら、どうぞ遠慮せずに誇ってくれ。そうすれば僕も、年を取るのが少しは怖くなくなるから。

 

母は、今でもバイオリンを続けている。結局、自分用のバイオリンを中古で買った。譜面台を運ぶ係りを若手ばかりやらされる話や、年度末の打ち上げ場所で揉めた話なども聞かせてくれる。そんな、中学生レベルの話も、なかなかに面白い。どうか、元気なままでいてほしい。

(↓YouTubeのリンク貼っておきます)

Shizuka Channel 004 You raise me up TorinoEX 2006 荒川静香HD - YouTube

 

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