鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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【日記】47歳からのHIPHOP入門㊲(同僚に歌集をプレゼントした話)

2024年3月某日 気に入る歌が見つかりますように

職場の同じチームのSさんに、本をプレゼントした話。

 

僕は、ツイッターで短歌を詠む人をたくさんフォローしている。フォローすると、(当たり前の話だけど)自分のタイムラインに短歌が並ぶ確率が上がるわけで、これが精神衛生にいい感じがする。

 

短歌っていうのは、「できごと」とか「気持ち」とか「あるある」とかを標本化して、収集しているようなところがあって、それがタイムラインに並ぶと、博物館の倉庫に迷い込んだみたいな、シュールな高揚感を味わえて楽しい。

 

それで、フォローしている歌人さんの本を、買ってみる気になったのだ。岩倉曰さんの「ハンチング帽のエビ」。ネットショップで注文して、届いたのが2カ月前ぐらいの話。

 

この本が、とても素晴らしい歌集で、とても気に入った。その作風は、「ネクラポップ」というらしい(おそらくご本人による短歌の自己紹介的キャッチフレーズ)。「ものごとをネガティブに受け取ってしまう」「ウジウジと思いわずらってしまう」というような「ネクラ」な感性が基調ではあるんだけど、その感性が切り取った「笑える瞬間」「心が軽くなる瞬間」のコレクションがなんともユーモラス。

 

それで、この歌集を生活の合間合間にチビチビと味わっているうちに、「この本を誰かにプレゼントしたい」という気持ちが盛り上がって、追加で2冊注文したんである。

 

誰にあげるか。同じチームのSさんにあげよう、と思いついた。去年の8月、チームを去るEさんにオノ・ヨーコの「グレープフルーツ・ジュース」をプレゼントした時に、Sさんは「私にはポエムを愛でる感性なんてない」というようなことを自嘲気味に話していたのを思い出したんだ。

 

Sさんはなんであんなことを言ってたのか。要するに、「私は今まで本なんてもらったことがない。誰も私と文化的感性を分かち合おうとしてくれない」みたいなことで無意識にすねていて、自己防衛的にポエムをバカにするようなポーズを取ることに慣れてしまったのかな、とか想像した。そういえば、まわりで好きな音楽やマンガやドラマの雑談をしている時、Sさんは少し居心地悪そうにしている気がする。

 

それで、「ハンチング帽のエビ」をあげるのに、Sさんがいいような気がしてきた。「詩を諦めるな。あなたは、詩が嫌いなんじゃない。好きな詩に出会ってないだけなんだ」みたいなことか。そう思いついたら、結構気に入るような気がしてきた。Sさんは、「皮肉屋が気づく、素朴なほっこり」みたいなことを話すのが好きなんだ。ネクラポップ、相性よさそう。Sさんからは何度もお菓子をもらってきた。そのお返しに本を贈っても別に変じゃないだろう。

 

それで、今日。本を持って会社に行ったんだけど。いざ渡す段階になって、急に恥ずかしくなって、軽くパニクったな。ポエムをプレゼントするなんて、相当なキモさじゃないか。「お菓子のお礼が本なんて、ちょっとステキなアイデアでしょ」「こんな本を知ってるなんて、僕ってセンスいいでしょ」とか、そんな内心を見透かされたら生きていけないよ。

 

しかも、我ながらこのタイミングで思い出したのは軽く衝撃だったんだけど、僕はSさんのことが「どちらかと言えば嫌いだった」のである…! 10年以上前にも、半年ぐらいだけ同じチームだったんだけど、その時、Sさんのことを苦手に思ってたことを急に思い出して。「他人のミスには厳しいくせに、自分のミスは気づかないし、気づいても言い訳する」みたいなこと。まあ、そんなことはある意味普通の話なんだけど、「あなたは味方ですよね」という前提で話してくるのが嫌だった。(気持ちを忘れてたぐらいなので、かなり些細な嫌悪感だったんだけど。「イヤな人」に対しては、自己防衛も含めて「面白がる」方向にスイッチを入れることが多くて、僕にはあんまり嫌いな人がいない。Sさんは絶妙に”ちょっと嫌いな人”のフォルダに入っていたかも…)

 

そんなことを思い出して、「好きでもない同僚に媚びを売ろうとしてるのかお前は。可哀そうな奴だな」と自分を責めつつ哀れむような気分が出てきて。いやあ、狼狽したなあ。

 

結局、そんな狼狽は潔く無視して、プレゼントしたんだけど。その時の僕に起きた心の動きは、「うるせえ構ってられるか」みたいな感じ。キモくてもいいじゃないか。「好きでもない同僚」って言っても、そんな、Sさんのことなんてよく知らないし、職場で「好きじゃない一面」が見えたからって、こだわる必要もない。どちらかと言えば、Sさんの「ポエム食わず嫌い」に挑戦してみたいだけのことで、そもそもが僕のエゴとしての贈り物なんだ、と。

 

結果、喜んでくれたのでよかった。1つでも気に入る歌が見つかりますように。

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