鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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「ヤル気がないなら帰れと言われて本当に帰る話」から考えたこと

先日の僕のツイートから。 

 

 

話したいのは世の中一般のことじゃなくて、僕の目から見える世界のことだから、ちゃんとした理解ができてるのか自信がないまま話し始めるんだけど。

 

ツイッターでよく見かけたのは、「ヤル気がないから帰れ、って言われると本当に帰っちゃう奴がいるらしい。ヤバい」っていう話が1つ。中学校の部活の先生が厳しめの指導をすると、真意(帰るな。ヤル気を出せ)をつかめずに、「指示に従って」帰ってしまう、というような話。

 

そのあとよく見かけたのは、「真意をつかめてないんじゃなくて、敢えてバカのフリをして帰るんだ。一種の抗議としての行動でしょ」というようなもの。(ツイッター上での話題の流れがよくつかめてないんだけど、僕の印象では設定が「部活」から「職場」に変わってた気がする)


どちらもかなりの数リツイートされていたから、少なくとも見た人が反応したくなるような話題だったんだろう。


もしも、僕の職場で「ヤル気がないなら帰れ」という上司と、本当に帰っちゃう新人がいたとしたら、僕はどう思うんだろう、と想像してみた。僕の感覚では、上司の方は「イヤな奴」、新人の方は「ヤバい奴」という感じ。


会社の上下関係、雇用関係を背景にして、帰れないだろうことを見越して「帰れ」というのはパワハラクソ野郎だ。弁解の余地はない。そういう奴に限って、「ハッパをかけるため」「本心では部下の成長を思って」だとか言い出す。ウソをつくな。ただ単に権力を行使する快感を味わいたくて叱り飛ばしてるだけだろう。百歩譲って、本当に部下の成長を願ってたとしても、「説得力のある指導ができない無能さ」の表れでしかない。


ただ、本当に帰っちゃう新人がいたとしたら、やっぱりそれは「ヤバい奴」な気がする。社会上の約束よりも、個人の気持ちを優先させてしまう、というか。客からのクレーム電話の対応だとしたら、「言い訳やちょっとした反論」はまあ理解できるけど、「電話をその場で切っちゃう」のはさすがにヤバい。本当に帰っちゃうのは要するにそういうこと。なかなかにものすごい。「イヤな奴」は我慢すればギリギリ一緒に仕事できるけど、「ヤバい奴」と仕事をするのは難しい。


ただし、実際の僕の職場には、「帰れと恫喝する上司」も「本当に帰っちゃう新人」もいない。いたことがない。だから、「想像上のイヤな上司と、想像上のヤバい新人を想像して、なんか疲れちゃった、ツイッターっ見てるとそういうことありがち」で終わらせればいい話なのかもしれない。


でも僕がこの話に興味を持ったのは、「そこまで極端な例はなかなかないけど、それに近いような例は職場でよく起こる気がするから」だと思う。おそらく、多くの職場でも似たようなものではないか。

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僕の職場では、近くの席で、上司Aと上司Bが2人で、若手Cに説教をしてるシーンがあって、それを思い出した。


このシーンには、ちょっと異例なことが含まれている。「他のスタッフ(僕とか)に見えるところで説教をしている」というところと、「上司が2人がかり」というところ。


なんでそんなことになったか。上司としては、しっかり指導をするつもりなら、面談室などで行っただろう。おそらく、上司Aとしては「一言ぐらい苦言を呈し、若手が反省の弁を述べてそれで終わり」のつもりだったが、若手Cがなかなか納得せず、途中でやめるにやめられなくなり、さらに上席の上司Bを呼んでくるしかなくなった、みたいなところ。特に上司側が激しく叱責することもなく、優しく諭すように話しているし、若手も怒ったり泣いたりすることもなく、冷静に話している。ただ、その「指導」が延々と終わらないところだけが異常だった。


聞こえてくる話の内容から、起こったことがなんとなく僕にも想像できた。若手Cは電話応対で、「用件も名前も伝えずに上席と交代せよ」という客に対し、「用件と名前(というか誰なのか)を確認させてください」と複数回申し出たところ、客が怒り電話を切った。その客はもう1度電話をかけ直し、その電話に出た別のスタッフが対応に苦慮した。そこで、若手Cの対応に問題はなかったか、と反省しているようなこと。


ここまでは、コールセンターでは「よくある話」だと思うんだけど、その後若手Cが上司たちの説教に譲らず、自分の非を認めなかったところがちょっと珍しかった。


若手Cの言い分は、「名前と用件を聞くのは会社の応対マニュアルに沿ったものだから、その指示に従って客を怒らせようと、それは自分の非ではない」というようなこと。上司たち2人は、「会社の用意したマニュアルでは、客が納得しない場合には、その場に適した対応をする必要がある。どう対応したらいいか迷う場合には、電話を保留にして上司と相談してくれ」みたいなことを話している。でも若手Cは、「電話を保留にする前に、名前と用件を確認するように研修で指導を受けました」とやはり譲らない。


若手Cの言いたいことも、なんとなくわからないでもない。会社の不完全なマニュアルとか、「マニュアル通りの対応をせよ」と繰り返しチェックや指示をしてくる体制、客を怒らせたら後出しでオペレーターばかり責められる風土、そんなことが普段から不満だったんだろう。


結局、若手Cはそれから数ヶ月して(このことが原因でかは僕にはわからないけど)会社をやめてしまった。「次の日から無断欠勤をして」というわけでもなく、しっかり最後まで仕事をしていたようだから、社会常識ゼロの若者、というわけでもない。


この件で、僕は若手Cを責めるつもりもないし、逆に弁護しようとも思わない。ただ、ちょっと不器用だな、と同情するぐらい。ただ、普段から自分の言い分や気持ちを、もっとうまく伝えられていたら、あんなにも意固地になることもなかったのかな、とはなんとなく想像する。

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ここまで書いてきて、今の僕に興味があるのは「上司、会社への抗議の仕方」を、習ったり身につけたりする機会なんてあったかな、ということ。僕の経験上では、あまり思い当たらないし、聞いたこともほとんどない気がする。


「目上の者を敬え」「少しぐらい嫌なことがあっても不平を口にするな」「チーム全体のことを考えろ」こういった類の考えは、だいぶ説得力を失ってきてはいるけど、「多くの場合当てはまる普通のこと」を言ってるだけにも思う。だけど、それを「絶対」として強調すると、「上司への適切な抗議の仕方」などは身に付きそうにない。


ただふてくされて上司の指示に生返事をして、いつか不器用なやり方で抗議して、周りから「ヤバい奴」扱いをされ、結局「イヤな上司」は相変わらず「イヤな上司」のまま。そんな小規模な悲劇がそこかしこで繰り返されるのを避けるのに、「適切な抗議の仕方を教えること」はある程度まっとうな処方箋になりそうに思うんだけど、どうだろう。


僕の職場でも、「部下を傷つけないやさしい指導法」みたいなことは繰り返し研修や会議で話題に上る。たかがバイトリーダーの僕にもパワハラ研修があるぐらいだから、「古いタイプの軍隊的な上下関係は、会社にとって現実的じゃない」とは、まあまあ誰もが考えてることだと思う。でもそれでも、「上司、会社はかくあるべき」というところの話までしかいかない。でもひょっとしたら、「上司(会社、ルール)への異議申し立て」の練習をしてもいいんじゃないか。そっちの方が案外、組織がうまく回る気がする。


「子どもと親」「小学生とクラスの担任」「中学校の部活での後輩と先輩」「大学生と指導教官」「会社の部下と上司」「市民と議会」それぞれの場面で、「口答えするな」というのではなく、「礼儀正しく、かつ効果的に抗議しろ」と教えるようなイメージが持てないか。


世の中全体のことは置いといて、僕に関係ありそうな場面だけ、いくつか思いを巡らせておきたい。


まず、自分の子どもに対して。「口答え」や「言い訳」を、頭ごなしに全否定しないように気をつけたい。

「言い訳しないで!」と叱りつけるのではなく、「言い訳は1回だけにして」などに言い換える。「泣くな!」ではなく、「泣き声だと、言いたいことが伝わらないよ」と教える。「文句言うな!」ではなく、「その文句はここが間違ってるから、通用しないよ」と文句の内容をしっかり検討していることを伝える。


そんな風にできたら、子どもは「文句は飲み込んで我慢するだけじゃなくていい」「でも、作法を守って効果的に抗議しないと、それは通じない」ということを学んでくれるんじゃないか。


もちろん、こんなことは希望的観測だし、子育てで気をつけようと思うことは、いつも「言うは易し、行うは難し」なんだけど。


では、職場ではどうか。いくつか合理的に思えそうな抗議の方法を考えてみた。


「上司と部下が対決する」という構図を「敵(イヤな客や非効率な業務ルール)をあえて設定して、上司と部下が協力して解決に向かう」という構図にすり替える。その中で「うまくいっていないところを提言する」という形での抗議にする。


上司への抗議が、一度で認められるとは思わない。論破しようとすると「感情をともなった勝負」みたいなことになってしまうので、上司がムキになるタイミングではなく、落ち着いて話せる時にこまめに何度も意見を伝える。


上司の態度や言い方がイヤなら、感情的に反論するのではなく、毅然とした態度でスルーする。不満をためて我慢するのではなく、「納得していない」ことを態度で示して、上司にナメられないようにする。


直接対決だと引けなくなるから、別の上司や別の同僚を巻き込んで、話し合う。


ここに挙げたようなことはどれもきっと、そう簡単にはいかないことだろう。「部下の反論にちゃんと耳を傾ける度量のある上司」は時々はいるかもしれないけど、「不器用な若手から、粘り強く合理的な抗議を引き出せる上司」はなかなかいない気がする。だからこそ、教育と練習が必要なんじゃないかな、と思った。


「パワハラ」で話題のスポーツ界の体育会文化ではどうだろうか。マンガを読む限りでは、「先輩やコーチに意見を言うことも、強いチームには必要」という認識が出てきているように思うけど、現実ではどうなんだろう。ちょっと興味がある。

 

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