2024年2月某日 久しぶりにヘタな英会話で妻と話した
子どもたちの吹奏楽の発表会の日。
子どもたちは、朝から一度学校に行って、「音出し」をする。いまいち理屈は分かってないんだけど、楽器にとってもウォーミングアップみたいな意味もあるのかな。会場入りしてからはそんなに時間は取れないので、その前にやる、と(複数の学校が参加するコンサートなので、リハーサル時間はほとんどないらしい)。
一度帰宅して。その後は現地集合。ちょっとトイレ休憩を入れて出発。車で会場から少し離れたところに子ども2人と妻を降ろし、僕は自宅に車を戻してから徒歩で。子どもたちの集合時間は、開演時間より当然早いので、それで時間的にはちょうどいい(なんか、そういうパズルみたいだな)。
学校からは、「徒歩で」会場に向かうように言われてるのに、車で送っていくのはルール違反、「ズル」みたいで子どもが嫌がるかと思ったけど、あんまり気にしなかったみたい。「みんなが車で来たら会場近くは混むし、もしも事故があったら大変。自転車も同じ、駐輪場所も足りなくなるしね。だから、みんなには徒歩で来るように言うことになる。でも、車で行って、会場から離れた場所で降りたら、あんまり関係ないでしょ。もちろん、こんなのは勝手な解釈だから、まったく威張ることではないことも注意ね」みたいな話をしようかな、と思ってたんだけど。(学校のルールを踏まえつつ、どうするかは自分で考えるようなバランス感覚、というか…)
うちの子どもたちの出番は4番目なんだけど。よその学校の演奏を聴くの、楽しいのよな。「出番の前に、めっちゃうまい演奏聴いたら自信喪失しちゃうのでは?」「でも、いい演奏を聴いて刺激を受けてほしい」みたいな、あまり美しくない親心で、野次馬的な軽い気持ちで見るんだけど、演奏中に、やっぱり応援したくなる気持ちも芽生えたりして。
「シンバルを持つ女の子の、姿勢のあまりの正しさ」みたいなの、見入ってしまった。音を響かせるのに適したポジションを取ろうとすることの美しさって、迫力あるよな、というような。「その真剣さで、空気を震わせてくれ」「勇気を出せ。音は届くと信じろ」と、そんな気持ちになるのよ。なんなんだ。少年マンガの主人公のメンターなのか。(その昔、奥田民生は「息子」の後に「人の息子」って曲を出したよね。進研ゼミのCMで使われてたやつ。他人の子どもに思いを馳せる時に生じるグルーヴってあるよな)
それで、自分の子どもたちの出番になると、今度は「大失敗をして、恥をかくことがありませんように」と、これまたあんまり美しくない心に戻っちゃう。
成長を感じる演奏で、ホッとしたよ。1学期の終わりの演奏会では、「マックスのデカい音の迫力と、それを出す時のタイミングが合ってるだけで、それなりにカッコつくんだな」というぐらい印象だったんだけど、今回は音圧でゴリ押しする以外の部分でも、主旋律以外の音がしっかり聴こえてくる時間も多くて、かなり曲らしくなった感じ。
うちの子どもたちはどうだったかは正直言ってよく分からない。そのパートごとの出来を聴き分けるのは僕には無理だし、というか僕の席からだと先生の指揮に隠れて、娘も息子も見えない、という。
とにかく、健康に本番を終えられて安心した、というような感じ。これ、スポーツの試合や大会のように、はっきり勝敗がつく部活だったら、親は何を思うんだろう。「勝っても負けても、何かを学んでくれたらOK。何も学ばなくても、無事に帰ってくれ」みたいな心境なのか、どうか。僕が今のところ想像つかないのは、うちの子どもたちが「ガチで勝負にこだわる」みたいな場面がないからかもしれない。
さて、今日のハイライトは、演奏会の後だった。学校に戻ってきた楽器をトラックから体育館の奥に片付ける作業の手伝いに出向いた時のこと。
顧問のT先生と立ち話する時間が少しあったので、この前の朝練習を見学した時の感動を伝えたくなった。今年度の始めに比べて、子どもたちの基礎練習への集中力が増してること。「サボってると怒られる」というだけの気持ちではなく、「出したい音」と「そのためにやるべきこと」のイメージが子どもたちの中にないと、なかなか集中の濃さは生まれないはず。
「子どもたちに、練習への自発的な意欲が生まれるのを誘い、待ち、励ますようなご指導をなさったことが想像できて、とても感銘を受けました」というようなことを先生に伝えたのね。そうしたら、先生は「よくぞ気づいてくれた」というような表情で息を呑んだ後、なんていったと思います?
「それができるようになったのは、○○さん(うちの娘)が、お手本になってくれたおかげなんです」と。
うおおおお。先生、そう来ましたか。感謝を伝えたら倍返しするスタイル!! 僕は、その一瞬で思い出しましたね。幼稚園の頃、習っていた新体操で。発表会の前の練習で、1曲踊り終わった後、次の練習のために最初の立ち位置に戻るの、うちの娘が一番早かった。「いちいち言われてからじゃなくて、言われる前に次の行動をスタンバイできる種類の人間なんですようちの娘は」と、口に出して言いそうになっちゃったよ。
家に帰ってから、さすがに「おかげ」は言い過ぎとようやく思ったけど(T先生も、僕と同じで褒め言葉が大げさになるのは薄々知っている)、それでも妻に話したね。理由はうまく言えないけど、子どもたちには聞かせない方がいいかな、と思って、久しぶりにヘタな英会話で妻と話したよ。恥ずかしながら、頬が緩んだよね。