少し前に、「地震で交通機関もめちゃくちゃだし、家族のことも心配なので欠勤してもいいか」と会社に連絡したら、上司に「這ってでも会社に来い」と言われた。「うちの会社(上司)って最低。辞めてやる(辞めてやった)」というようなツイートを随分目にした。
僕もやはり、「権力を行使する快感を垂れ流す嫌な上司」を思い浮かべて、憤りを覚えた。でも同時に、「上司に認められなくても休めばいいのに」とも思った。
それぞれの会社の地域(被害程度)とか、その上司が実際どんな言い方をしたのかとか、そのツイートが事実なのか創作なのかとかはよくわからないので、そのツイートのことはどうでもいい。ただ、僕の身に実際起こったことで似たようなことを思い出したので、ちょっとメモしておきたい。
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すごく優秀な新人アルバイトが辞めてしまった話。
東日本大震災の数ヵ月後。後輩の女性スタッフが辞めてしまった。僕の勤務先はコールセンターで、新人スタッフが入社半年もしないうちに辞めてしまうなんていうことは珍しくないんだけど、その人が辞めたのは少し残念だった。
電話対応も、社内で同僚や上司と話すときも、物腰が柔らかく、物覚えもよく、すごく仕事ができる人だったのだ。「もうちょっと(入社半年)で有給もらえるんだから、有給が出てからそれを消化して辞めればいいのに」ぐらいのことは思った。
それから5年ぐらいして、辞めた新人さん(Aさんとする)と同期で仲が良かったBさんから、Aさんの辞めた理由を噂話として聞いた。
3月11日の当日、Aさんはお子さんを保育園に預けており、現場の管理をしていた社員Cさんに退社を申し出たけど認められなかった。その対応がひどいと思って、会社への信頼感がなくなり、辞める決意をした、のだそうである。
僕は口にこそ出さなかったけど、「その程度のことで辞めるなんて、繊細すぎる」と思った(もちろん、それだけが理由じゃないんだろうし、そんなことは誰にも言っていない)。辞めてしまったAさんを責めるつもりもないし、Cさんを庇うつもりもないけど、なんというかちょっとめまいがするような徒労感を覚えた。
Cさんは、実は社員になったばかりで、正直言って仕事ができるタイプではなかった。現場のアルバイトを管理するノウハウも覚えている途中の、「気の弱い新人マネージャー」だったのだ。
だから、3月11日の当日の混乱で、Cさんが適切な判断や指示ができなかっただろうことは容易に想像できる。アルバイトスタッフから「帰ってもいいですか?」と聞かれて、それを認めてもいいのか、即時に判断できなかったんだろう。
もちろん、だからと言ってAさんはCさんを許さなくてもいい。腹を立てて当然だろう。ただ、上司なんて、会社なんて所詮その程度、ではないか。「上司から高圧的な態度で暴言をくり返し吐かれた」というのなら話は別だけど、「即座に適切な判断をしてくれなかった」ぐらいは、あり得ることとして想定しておいたほうがいいんじゃないかな、と思った。
あんなに優秀なAさんでも、「Cさんが使えない社員」であることを見抜けなかったのか。「帰っていいですか?」じゃなくて、「今すぐ帰ります」と断言すれば、絶対に言い返せないヘタレな若者だったのに(Cさんも2年後ぐらいに会社を辞めてしまった)。
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上司や、親や、先生や、客の言うことを、いちいち真に受ける必要なんてない。
「〇〇というミスが発生しました。今後同じようなことが絶対ないように、皆さん再度気を引き締めて業務に取り組んでください」こんなようなことを、朝礼で上司が言ったとする。これを真に受けて、「絶対ミスしないよう気をつけよう」と思っていたら、やっていられない。
「絶対」なんてことは「不可能」なのは明白なわけであって、これは「仕事熱心な上司が残念ながらボキャブラリーが貧困だっただけ」と思うとちょうどいい。
こんなようなことを、延々と思い出した。僕もちょっとしたツイートのことを真に受けてしまったことは、否定できない。
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