アメフトファンの最大の悩みは、アメフトの面白さを周囲の人になかなか分かってもらえないことだと思う。
「そもそも、何をやってるのかよくわからないし、どこで盛り上がっていいのかがナゾすぎるんですけど」
・・・ですよね。でもこっちだって、どこから説明していいのかわからないんですけど・・・
そう思ってたら、先日、ラグビー好きの人と話す機会があって(残念ながら僕はまったくラグビーを知らない)、聞き上手な彼が、こう聞いてくれた。「アメフトって、1回ずつプレーが止まるじゃないですか? それなのに面白いんですか?」と。
非常に! いい質問である。そっか、そこが切り口になるぞ。
「それはですね、いちいちプレーが止まるから面白いんですよ」と僕は前のめり気味に答えたものである。
(スポンサーリンク)
アメフトはボールを持っているチームがエンドゾーンにボールを進めようとする(オフェンス)のと、それを防ごうとする(ディフェンス)との団体肉弾戦である。
より具体的に言うと、ボール近辺ではパスの出し手であるQB(クォーターバック=オフェンス側の司令塔)を、5人の屈強な兵士が守り、そのQBにタックルを食らわせようとするディフェンダーと「5人対5人の団体相撲」を行い、フィールド全体ではパスを受けようと動き回るレシーバーと、それをマークするディフェンダーが「5人対5人のバスケ的なゲーム」をすることの組み合わせがアメフトの攻防である。ここでは「5人対5人」と仮に人数を決めたけど、実際には局面ごとに人数が変わってくる。それが「作戦」であり、見所なんである。
つまり、QBにタックルを食らわせようと、ディフェンス側が「相撲要員」を増やすと、バスケ対決が不利になる。または、パスを通されるのを防ごうとして「バスケ要員」を増やすと、団体相撲が不利になる。
オフェンス側から考えると、ロングパスを狙って「バスケ重視」の作戦で行くと相撲で負けてボールを持つQBがつぶされる、かと言ってQBやボールを手渡しされたランニングバックを守るために「相撲重視」にすると、あまり長距離のゲインは望めない。
なので、オフェンス側は「相撲重視のフリをして、突如バスケ勝負」みたいな駆け引きをするし、ディフェンス側はその狙いを見破ろうとしたり、逆に「バスケ重視と思わせといて一発タックル狙い」みたいにディフェンスから勝負を仕掛けたりもする、という・・・
で、「プレーが止まる」というのは、1回の攻防の1回ごとに、いちいちプレイを停めて、立ち会いをやり直すということ。これが上に書いたような勝負のコクを演出するための絶妙なルール設定なのである。
より具体的には、ボールを保持してるオフェンス側(プレーを選べるので有利なはず)は、「チームが全体(実際は1名だけ動ける)が1秒静止してからでないと、プレーを開始できない(ディフェンス側に、一度フォーメーションをさらさないといけない=不利)」という縛りだ。この縛りによって、「戦術の読み合い」という要素が不可避になるということ。
さて、ここまでで話はまだ半分。
「キングダム」に例えると、アメフトの面白さが伝わりやすい、という話が本題だ。
(↓アマゾンのリンク、貼っておきます↓)
キングダム 50 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
「キングダム」は、中国を舞台に、秦の始皇帝誕生を題材にした歴史英雄ロマンのマンガ(全然詳しくないのでディテールを説明できません・・・違ってたらごめんなさい)で、神話的な武力と知恵を持ったカリスマ武将たちの合戦を、かなりコッテリと書いている中毒性の強い作品。僕は読みながら、「この合戦の面白さって、アメフトと同じじゃねえ?」と思っていたのである。
「挑発に乗って攻めてきた1000人ぐらいの部隊を、潜んでいた伏兵部隊が横からぶっ倒す」とか、「大将自ら囮になって、敵の主力部隊を引きつけている間に、人数の少ない(=機動力のある)部隊が敵の本陣を奇襲」とか、「そんな細かい戦術をあざ笑うかのような圧倒的な強さの武将が敵を蹂躙」とか、「敵のハメ手に気づいて、即興的な動きで戦局打開」とか、全部アメフトの魅力と共通するのだ。
「アメフトを見ると、天才軍師の駆け引きも、偶然が招く歴史の皮肉も、ヒーローの強さと運命の残酷さのせめぎあいも、全部味わえて興奮間違いなしですよ」「1試合で、20回ぐらいの合戦と、王国の隆盛を味わえるんですよ」と。
アメフトをなんとなく見たことがあり、多少は興味があり、かつ「キングダム」を読んだことがある人、にしか通じない例えになることは書き始める前から薄々分かってたけど、一応これで今回は終わります。
アメフトファンには「キングダム」おすすめです。「キングダム」ファンには、アメフト、おすすめですよ!