鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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【日記】47歳からのHIPHOP入門㉓(もう一度、英語を好きになる旅)

2024年2月某日 卑屈は放置すると膨らむんじゃないか

職場の同僚の男子2人が、「どうせ僕なんて結婚できない」というようなことを話していて。男子といっても30代(おっさんやないか)なので、友達が結婚したという知らせを聞くことが多いんだろう。「ちょっと前までは正直焦ってたけど、もうあきらめの境地に達した」というような、ある種テンプレの雑談なんだけど。

 

なんというか、実際に相手が見つかるかどうか、結婚したいと思えるかどうか、結婚までのハードルを越えられるかどうかの問題より前に、「結婚のために頑張れる気がしない」「そういう自分を想像できない」みたいな感じ。「頑張るよりはあきらめる方が楽」だと、そういう感覚は正直言ってよく分かる。

 

余計なお世話だと思うから、言わなかったし、これからも言わないけど、「いや、そんなに簡単にあきらめない方がいいんじゃない?」と思った。

 

「どうせ僕なんて」という卑屈を放置しておくと、それは膨らむのだ。転がる雪だるまのように、複利の借金のように。「どうせ僕なんて」と思いながら過ごす40代はキツい。30代って、20代の余韻のような感覚で過ごしてしまうところがある(少なくとも僕はそうだった)。20代はまだ、体力も時間も可能性もあるから、「どうせ僕なんて」という自虐を嗜好品として楽しむ余裕があった。でも、40代になって、膨れ上がった「どうせ僕なんて」と一緒に生きるのはあんまり簡単じゃない、でしょ。

 

「結婚」は相手次第でもあるので、頑張ってどうにかなるものでもないんだろうけど、「なりふり構わない自分」は身につけておいたほうがいいんんじゃないか、と。

 

実際には彼らは、本当に結婚したくないのかもしれないし、なりふり構わず動いてるのかもしれないし、すでに結婚準備中なのかもしれない。彼らの事情をよく知らない僕が、「本当は結婚したいのに、楽だからあきらめてるだけなんでしょ」と決めつけるのは失礼だろ、って思って黙ってた。

 

でも、友達だったら言うかも。「どうせ」って口にしてると、気づかないうちに自己暗示がかかって、ネタのつもりが本当の「どうせ」になっちゃうからやめた方がいいよ、と。(友達少ないから、「あえて言わずに黙ってること」が増えるよな)


2月某日 「もう一度、英語を好きになる旅」

僕がこの3カ月間ほどハマっているYouTubeのチャンネルがあって、ShotGunDandyさんという方がやっている、HIPHOPの和訳解説。

 

新旧のUS曲の紹介して、リリックを和訳、スラングやダブルミーニング、HIPHOP業界や社会情勢の文脈上の意味などを文字どおり「徹底解説」していく。なにせ、3分弱の曲の解説に60分かけることも少なくないわけで、「徹底」の名前に負けない濃さの動画ばかりで。

 

僕が特に好きなのは、「Madvillainy」というアルバムの全曲解説のシリーズ。トラックを作るMadlib、MCのMF DoomのコンビユニットであるMadvillainの伝説のアルバム、「Madvillainy」ということらしい。この番組に教わったおかげで、僕のお気に入りのアルバムにもなった。

 

ラッパーMF Doomが鉄の仮面を被ったヴィランに扮して、業界や世の中を攻撃する、というコンセプト。「顔を隠したヴィランとして、メジャーレーベルの広報力を借りずとも、圧倒的な実力で売れてやる」という批判性が、なんともオシャレで、ユーモラスで、もの悲しさも感じさせて面白い。

 

この時点で、二面性があるじゃないですか。「はみ出し者」としてのヴィランだからこそ「最強」なんだけど、強ければ強いほど孤立していくというドラマが、アルバムの通底音になっているみたいなイメージで。ユーモアと攻撃性がお互いを際立たせるようなキャラ設定、覚醒と酩酊を同時に味わえるような多重的なリリックに引き込まれた。

 

(僕が一番好きだった「Accordion」の解説のリンクです↓ )

【和訳&徹底解説】MadVillain – Accordion 【超名作】【HipHop】【洋楽2004】【リリック】【 Underground】【lyrics】【アングラ】 - YouTube

 

日々の生活の合間に解説動画をちょっとずつ見ていって、ようやくアルバム最後の曲まで見終わって。ちょっとだけ達成感もあり、ちょっとだけ寂しいような気持ちで、1つ気づいたことがある。僕のHIPHOPディグの旅、あんまり進んでないじゃないか、と。

 

ShotGunDandyさんのチャンネルを最初に見つけたのは、ケンドリック・ラマーの曲の和訳や解説をネットで漁ってた時に、「DNA.」の和訳解説動画を見つけた時が最初だったと思う。攻撃的なリリックや、汚いワードを、ですます調で説明していくギャップが独特で、リリックの完成度が高いと「ヤバすぎてつい笑っちゃう」というようなリアクション動画的な面白さもあって。

 

(リンク貼っておきます↓)

【和訳&徹底解説】Kendrick Lamar - DNA. 【名作】【HipHop】【洋楽2017】【リリック】【lyrics】【DAMN】 - YouTube

 

で、その時に「面白いチャンネル見つけた」ということ以上に、「面白い趣味を見つけたな」と感じたのよ。思春期の頃、洋楽が好きとか言うやつを「カッコつけやがって」と妬み、そのまま食わず嫌いしてきたけど、USの曲を理解していくのは相当面白いことかもしれない。「知的興奮がある」って、「お勉強好き」みたいなイメージで捉えてしまいそうになるんだけど、実はもっと本能的な、官能的な、野性味のある、シンプルな気持ちよさなんじゃないか。もっと「アハ体験」味わわせてくれよ、というような。

 

HIPHOPのリリックは、スラング、メタファー、ダブル・ミーニング、ユーモア、引用の連続なんだけど、それって、プロの翻訳者の目線で言うと、「勘弁してくれよ」っていう要素じゃないですか。理解するのが難しく、理解したところで日本語にするのも難しくて。どうしても訳すのに時間がかかるんですよ。で、訳すのに時間がかかっても貰えるギャラは変わらないので、自然とイヤになってしまう。ドラマでダブル・ミーニングが出てくると「気の利いた言い回ししてんじゃねーよ」と思い、引用が出てくると「どうせ元ネタ知らねーよ」と、反射的に攻撃してしまう。

 

だけど、よくよく考えたら、映像翻訳の勉強を始めた頃は、むしろそういう「理解するのが難しい箇所」「訳すのが難しい箇所」が好きで、憧れてたじゃないですか。もう翻訳の仕事なんて休業中なのに、「プロの翻訳者の目線」で物事を見る必要なんてないでしょ、と。

 

ShotGunDandyさんの「DNA.」解説動画を見ながら、そんなことを思って。HIPHOP、USの曲を聴いていってみようかな、と。もう一度、英語を好きになる旅に出かけようじゃないか、みたいなことを思ったんよ。 

 

…いやあ、その旅、あんまり進んでないな。「Madvillainy」、アルバム1枚分の解説を見るのに3カ月かかってることに気づいて、そんなことを思った日でした。どうしたら旅が進みやすいか、出来る工夫を探してみようかな。

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