【日記】TOEIC受けてる場合じゃねえよ⑪

2022年3月某日　人生の途中で反省するなよ

先日受けたTOEICのリスニングの途中で。「あれ、聞き損じた。ああ、もうダメだ」「この10年間、頑張ったのって英語ぐらいなのに、情けない」と、自分を憐れむような気持ちになって集中を乱した話を書いた。

将棋では、久保利明さんが「前後際断」とよく書くらしい（今も書くのか知らない）。「過去も未来も断ち切って、今現在に集中」みたいなこと。「ミス」や「欲」に集中を乱されたらベストは出せない。

何かの対局で、羽生善治さんは、打った歩を、その次の手で成り捨てたことがある。これは驚いた。打った歩の意味を生かそうとするのが普通だ。すぐに成り捨てるなら、初めから打たなければよろしい。歩を一枚損するだけの手で、プロとは言わず上級者なら「絶対にやってはいけない」クラスの手順。「やってはいけない」というか、「悔しすぎてできない」のが普通。「歩を打つ前の読みが足りてなかった」ことを認める手だからだ。これも、一種の「前後際断」だ。ミスを認めて、そのことで揺れずに、「現局面でのベスト」を指す勇気。驚いた。

NFLのトム・ブレイディは、勝ったスーパーボウルで（49でも51でも53でも）インターセプトを投げてる。「ミスを引きずらないメンタリティ」が勝つ秘訣だ。反省は、試合が終わってからすればいい。もしくは、試合中に反省するのは、試合前のイメトレが足りないんだ。

で、TOEICの試験中に、「みじめな気持ち」になってしまった自分を改めて反省しましたよ、と。事前に「みじめな気持ち」を存分に味わっておけよ。「スコアを欲しがってる自分」がカッコ悪くて、ちょっと自分でもバカにする気持ちがある。「誰かからスコアをつけてもらって、それを誰かに自慢しないと、自信が持てないのかよ。ダサすぎ」と。

だけど、違う。ダサさを受け入れろ。「スコアもなしに自分に自信が持てる奴なんて、そんな奴、バカか天才だけだ。スコアを欲しがるのは確かにダサいけど、そんなもの、普通だろ」と。

さて、TOEICや将棋やアメフトの話じゃなくて、人生もそうだろ、と思った。まだ人生の途中だ。ミスにへこんで、落ち込んで、自分を憐れんでる場合じゃない。チェーホフの「ワーニャおじさん」、アンタ人生の途中じゃないか。落ち込んでる場合じゃない。ソーニャからも、「Do your jobよね」ってたしなめられただろ。

反省、振り返りは必要。落ち込むのも自己憐憫も時々はしょうがない。だけど、自分をみじめに思ってる間は何もできない。みじめさを受け止めて、かみしめてから、いったん断ち切れ、とか思いました。

3月某日　美談じゃないだろ

YouTubeかテレビで見たCM。木梨憲武さんが演じる上司が「今日はもう、うまいもんでも食って帰んな！」っていうやつ。ペーパーレスで人事手続きができる「スマート人事」みたいなやつの宣伝らしい。アレ、おかしくないですか？

（記事リンク貼っておきます↓）

prtimes.jp

新人らしき女性社員が、外先の雨の路上から「戻ります」と連絡する。そうすると、「うちは紙とか大丈夫なアレだから！」「スマホでできるから！」と言って、最後にやさしく「うまいもんでも食って帰んな！」って。

「直帰しても大丈夫なこと、外出前に伝えてやれよ」「書類の提出じゃなくスマホで手続きできること、新人が分かってなかったら、それ直属の上司のせいだろ」じゃないですか？だから、木梨さん演じる上司は、まず「業務ルールの周知の不足」を謝るべきでしょ。「スマート人事」によって従業員が働きやすくなるのは素晴らしい。それを、上司が「俺の機転、やさしさ」みたいにしてるのは、ズルいじゃないですか。「うまいもんでも食って」って、アンタがおごってくれるわけでもないのに？

何が腹が立つって、「美談でもなんでもない話」を「美談」として演出してることですよ。そんなこと、映画でもドラマでもCMでもよくあるんだろうけど、最初に見た時に感じた違和感が言語化できたので、メモしておいた。