明治時代かなにかの国立大学の研究室。100メートル走のタイムを計るための精密な時計を、学生たちは試行錯誤の上、苦労して作り上げた。「先生、これで100分の1秒まで正確にタイムを計れます!」喜ぶ学生たちに、老教授が一喝した。「喜ぶのは、100メートルの距離を、精密に測ってからにしなさい」と。
中学生のころ、学校の授業で聞いた脱線話である。
どの先生から、何の授業に関連して聞いたのかは覚えていないけど、強く印象に残った。
時計がいくら正確でも、99メートル走のタイムを計ってしまっては、記録として意味がない。
コールセンターでは、お客様対応のスクリプトがある。会社で定められた名乗りがあって、顧客データを参照する時などにも、お聞きする内容や手順が定められたものだ。
そして、オペレーターの対応内容を確認して、会社の定めたとおりの対応ができていたかチェックする必要もある。
で、チェックする側(品質管理部)と、チェックされる側(オペレーター)も、100点(=チェック項目の完遂)を求めてしまうことがよくある。
「この部分の説明が抜けていました」と大真面目にチェックして、指摘を受けた側も(注意されたこと自体にはちょっと腹を立てながらも)結構真面目に受け止めているスタッフが多い。
でも、僕はその度に思う。
「もともとのスクリプトが100点じゃないんだから、そのスクリプトで100点を目指すのってナンセンス」
カタコトの日本語で電話をかけてくるお客様もいるし、コールセンターに電話をするのがはじめての人と10回目の人とでは心地よく感じる対応は当然違う。
2分以内に電話を終わらせたい人と、10分ぐらい余裕がある人では、求められる応対が当然変わってくる。
なので、「100点満点のスクリプト」は理論的に存在しない。
そんなことは管理者側もわかっていて、「マニュアルどおりの対応だけではなく、臨機応変な対応が必要」みたいなことも繰り返し言われる。
不思議に思うのは、「チェックする」という動作になると条件反射的に100点を目指してしまうことだ。なので、あえて「ナンセンス」と言いたい。「非効率」などでもいいと思うけど、「非効率」と言っただけでは、真面目な人たちは100点を目指してしまう。チェッカーもオペレーターも苦しいし、顧客も大して得をしていない。
適切な目標設定が大事だなあ、と想像します。
「60点以上の対応を、すべてのコールでクリアしてください」
というほうが、結果的にうまくいくかも?
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