鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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素直でマジメな人が不必要な権力行使に加担してしまう切なさについて

半年に一度、会社では「緊急連絡メールシステムの訓練」が行われる。地震や台風などの災害が起きた時に、従業員に安否を確認するメールが一斉送信されて、僕らはそのメールを返信する、というもの。昨日もあった。


僕は、この「緊急連絡訓練」が、ものすごく嫌いなんである(例によって心が極端に狭い)。何が嫌いかと言えば、90分以内に返信しないと、チーフから電話がかかってきて、メールを返信できなかった理由を聞かれるんだ。


この、「90分以内に返信しろ」の「圧かけ」が、悲しくなる。特に説教をされるわけでもなく、嫌味を言われるわけでもない(「メール確認できてますか? 気をつけてくださいね」程度だと思う)んだけど、それでも、僕には「パワハラと大差ないじゃん」と思えてしまう。まあ、パワハラではないかもしれないけど、同根じゃないですかね。シンプルに「そんなことしないでもよくない?」と毎回思う。


災害時を想定したシステムがあるのはいい。それを半年に1回確認するのもいい。アドレス変更を会社に届け出ているか、迷惑メールの設定になっていないか、確認するのは必要な気がする。でも、「90分以内の返信」は求める必要なくないですか? 「次回の出勤時までに返信」などのルールで実施しても、十分訓練の意味がある気がする。


実際の災害時を想定してみて、90分以内にメールが送れるかどうかなんてわからない。地震直後ならメール自体が混み合ってるかもしれないし、夜中だったら(あるいはどの時間帯でも)寝てる途中かもしれない。


従業員の無事と出社可否を早く確かめることで、別の拠点に応援を求めたり、シフトが休みのスタッフに臨時勤務を募集したり、対策ができるから、早めの返信が望ましいのかもしれない。でも、それだって100%じゃなくていい。実際、90分返信がなければ、メールは自動的に再送信される。催促はそれで十分な気がする。


それなのに、メールの返信が遅れたスタッフには、90分後に電話をかけることになっている。これは、「圧力」じゃないですか。「緊急時のメールシステムの確認、訓練」というルーティンに、「会社への忠誠度チェック」という余計な要素が、いつの間にか加わってる。だって、チームごとにメール返信率が把握され、それが社員たちの間で周知されているんである。あまりにバカバカしいじゃないか。


バカバカしいというか、前向きな言葉を使えば、何でそんなことになってしまうのか、ちょっと興味深い。僕は、自分が休みの日に、会社への貢献度を試されるのは遠慮したいな。反抗したいんじゃなくて、シンプルに不要じゃないですか。勤務時間に忠実に業務するために、休日は会社のことはできる限り忘れさせてくれよ。


でも現実には、真面目なチーフは(嫌味な言い方をするなら「素直な人」は)、「チームのみんなにちゃんと返信をしてもらおうと呼びかけなくちゃ」ってなってるし、真面目なスタッフは「私の返信が遅れて、チーフに恥をかかせたら悪いから、ちゃんと返信しなくちゃ」と、休日なのに緊張してアラームをかけたりしてるんだ。


「ただの確認、訓練」に、「業務命令への忠誠度チェック」という要素がいつの間にか加わって、「素直でマジメな人」がそれに過剰に適応してしまう。それで、「悪人が1人も登場しないのに、結果として誰かを不必要に緊張させる」という事態を招いてしまう。そこまで思って、僕は悲しくなる。「素直でマジメな人」が、ある意味加害者になってしまってるじゃないか。


僕が神経質すぎるのかな。だけど、普段からよほど気をつけていないと、「悪意がなくても権力の必要以上の行使は起きてしまう」と、僕はいちいち思い出してしまうんだ。権力の行使をする時(この場合、メールを返信せよという業務命令)、それが小さなことであっても、本当に必要なことかどうか、チェックするクセをつけたいな、と思ってる。賛同してもらえる自信はあんまりない。


(※会社のことを書いているので、フィクションも混ぜて書いてます。僕はメールに気づいて2分で返信しました。僕も「素直でマジメな人」の一員かもしれません)

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