鯖缶@3rd&forever

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【マンガレビュー】「GIGANT」の鮮明な悪夢が唯一無二すぎる件

「GIGANT」(奥浩哉)読んだ。「GANTZ」「いぬやしき」のよさを、さらにクリアに、シンプルに出した感じ。とはいってもその「よさ」というのは、「めまい」というか「気持ち悪さ」に近い感覚なんだけど。その、「気持ち悪さ」が洗練された印象が残った。

 

 

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よくあるありきたりな感想なのか、全然的外れな感想なのか分からないんだけど、「不気味の谷」に似た「気持ち悪さ」を読んでる間ずっと感じていて、そこが一番の魅力なんじゃないか、と。


不気味の谷。人間を模したロボットのフォルムや動きが、人間に似てるほど「かわいい」と思えるが、ある程度以上に過ぎてしまうと、「気持ち悪い」と感じてしまう、というアレ。それを「GIGANT」を読んでいる最中に何度も感じた。

 

カタストロフィックな東京を描く画面が鮮明。絵がうますぎて、逆にウソっぽく見えてしまう。これが、「不気味の谷」に似た印象がする。


現実の風景を、ある種の約束事に準じて記号化して描くのがマンガ表現とすれば、読者は記号化、平面化された情報を、脳内で都合よく解凍して立体化させたり、動きを再生したりするんだろう。その時に、「ウソっぽさ、本当っぽさ」をいちいち判断することはない。


だけど「GIGANT」では、鮮明に描かれた東京の風景を目で見て、脳が認識する時に、一瞬「これホンモノか?」と思って、その一瞬後に「いや、違うわ。これ、フィクションでした」といちいち認識し直す感じが、「逆にウソっぽい」という印象の正体か。


それで、その「何かウソっぽいんだよ」という感覚が、読み続けていると、「このウソっぽさが、むしろリアルじゃね」という感覚に入れ替わるのが、「GIGANT」の魅力なんじゃないか。だって、僕らが生きているこの現実、とてつもなくウソっぽいじゃないか。電子マネーってなんだよ。「カネ」っていう時点で価値をかなり抽象化してるのに、電子マネーにしちゃったらもう「実感」とかないじゃん。あの、「チャリーン」みたいな電子音が、僕らの薄っぺらい現実感の象徴だろ。


「GIGANT」の読書体験は、リアルすぎて怖い悪夢に似てる。現実ではないと知ってるけど、現実と見分けのつかない夢を見させられてる。目をそらそうとすればするほど、夢を終わらせようとすればするほど、意識が鮮明に覚醒して、見たくないものを見させられてしまうスピード感。それを、独特の「ウソっぽさ」が支えてる。


例えば、「悪夢性」を支える要素として、パピコの“必然性がないほど誇張された胸”は非常に重要な演出なんじゃないか、と思える。「ウソっぽいことで逆にリアル」という構造と相似形で、「“爆乳”にする“必然性がない”ことが逆に“必然”」みたいな印象を持った。端的に言えば、奇妙にデカすぎる。主人公や、読者の性的妄想によってそこだけデッサンが歪んでしまったかのような描写で、その「歪み」のウソっぽさが逆に生々しい。


巨大化したパピコの胸が戦闘で揺れる様子が、執拗に描かれている。その描写にはあまり他のマンガで感じたことのないような、迫力のあるポエジーが宿っている気がする。“爆乳”という属性を背負わされたパピコが、文字通り全裸で戦わなくてはいけなくて、「デカすぎる胸」という「ままならなさ(自分の体なのに、コントロールできないもの)」と一緒に奮戦していることが、理屈じゃなく伝わってくる。


あの「揺れすぎる爆乳」を見て、読者は何を思ったらいいのか。少なくとも1種類の感情では収まらない気がする。「フェティシズム的なエロさ」「気持ち悪さ、怖さ」「不条理ギャグのような冷めた面白さ」が混ざった感覚。「胸を強調した絵」を、さらに誇張して、「エロいかどうか」だけの地平から超越してしまったような痛快さがあるような気がした。


鮮明すぎる悪夢のように終末を描いて、そこに一貫して描かれているのはピュアな愛という、あっという間に読める全10巻。唯一無二すぎる。

 

 

 

 

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