鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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「外科医は母親だった」のクイズにある違和感

ジェンダーについてのバイアスを話したいときに「まくら」にする有名なクイズがあるじゃないですか。

 

父親が子どもを乗せて運転していた車がトラックと正面衝突。父親は即死、後部座席の子どもは意識不明の重体。子どもは病院に搬送され、脳手術をすることに。執刀医は、海外でも高名な脳外科の権威。ところが、この脳外科医は手術室に横たわる子どもを見て、こう叫んだ。「この患者は私の息子なので、私には手術できない」さて脳外科医と患者の関係は?

 

引用元↓

増幅か打破か、アンコンシャス・バイアスと広告 – オルタナ

 

(※たぶんもともとのクイズの出典は日本語じゃないと想像します。ちょっと細部の違ういろんなバージョンがあると思います)

 

この話、「外科医は、患者の母親だった」って言うのが答えで、「海外でも高名な脳外科の権威という時点で、あなたはこの脳外科医を男性だと思い込みませんでしたか? あなたにはそのつもりがなくても、外科医は男性の仕事という思い込みがあるのです」とつながっていくんだけど。僕も、はじめてこのクイズに遭遇した時は「なるほど、そうかもしれない」と思って印象に残りました。


最近思うのは、「このひっかけ、ちょっと意地悪じゃない?」と。

 

「もし母親が執刀医なんだったら、物語の説明の順番が変わるでしょ」と思うのです。「父と子が出かけている際に交通事故に遭い、運命の皮肉というか、最悪の偶然というか、勤務中の母親の元に重体の子どもが運ばれてきた」というストーリーを伝えるなら、このクイズみたいな話の順番にならないですよね。「執刀医は、海外でも高名な脳外科の権威」とか、もはやどうでもいい。そんな重要じゃない情報を入れて、なんでミスリードしてるんだ、単なるひっかけだろ、と。「亡くなった男の妻であり、重体の子ども母親である外科医」が明らかに一番重要な情報で、それを最初に伝えないなんて、どんだけサイコパスなんだよ、と。


そう思うと、このクイズについての印象が「なるほど」ではなくて「意地悪だな」っていう印象に変わる気がします。「執刀医は母親」という解答がすぐに思いつかなかったのは、はたしてジェンダーについてのバイアスがあるからなのか。そうかもしれないけど、どちらかと言えば、単に叙述トリックにひっかかっただけなんじゃないのか、と思うのです。

 

そう思うとこの「意地悪」、ちょっと注意が必要じゃないですか?  つまり、わざわざ人をひっかけるようなクイズを作っておいて、「今あなたがひっかかったのは、あなたが性差別をしているからです」と脅す。「そうかもしれない…」と反省させてることで、いわば恐怖によって相手をコントロールするような話法にも感じて、僕は違和感を覚えたんでしょう。


ジェンダーバイアスを少しでもなくすようにしたい、という注意喚起のはずが、必ずしもそれが原因とは言えない「間違い」について、「それはバイアスがあるからだ」としてしまうと、むしろバイアスを強めてしまうことにならないでしょうか。


自分の「思い込み」に気づいて、その思い込みが場合によっては誰かを傷つけるかもしれない、と省みることはすごく大事なことでしょう。だからこそ、そのことを思い出すのに、「意地悪なひっかけ」は必要ないんじゃないかな、みたいなことを思いました。

 

 

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