鯖缶@3rd&forever

2児の父のエッセイブログです。子育て、英語ネタ、コールセンターあるあるなど。

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まずは客の期待を下げろ(クレーム対応に使える考え方⑧)

僕は今の職場のコールセンターでもう20年働いているし、その前も3箇所のコールセンターでの勤務経験がある。その中で、思うことは「客の想定した対応を、コールセンターのサービスが超えるのは非常に難しい」ということだ。その現状と、「ではどうするのがよいか」を考えてみたい。

 

 

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①組立家具の作り方がわからずにコールセンターに電話してみた

自分が働いている会社のことは具体的には書きにくいので、自分が消費者の立場として経験したことを例にする。

僕が食卓とイスと勉強机をいっぺんに買ったときのこと。組立家具である。家具を買うときはテンションが上がってるので何も考えないけど、いざ作るとなると相当にイライラする、あの組立家具である。

そもそも僕は、子どもの頃プラモデルが苦手で、ガンダムもガンタンクも完成させたことのない不器用な子どもだった。なんとなく苦手意識があるのでねだりもしなかったが、あるとき母が「大阪城」のプラモデルを買ってくれた。思ったとおり、僕はうまく作れなかった。経験不足で勘が悪い。パーツを、上下逆に付けてしまったりする。すると、当然上手くハマらないのだが、僕はよくわからなくて、接着剤を多めに付けてなんとかしようとする。結果、「乾いて、透明だけどなんか汚い感じの接着剤」にまみれた、「ハナクソ城」ができあがった。

そんな僕だから、組立家具もうまくいかない。1カ所、イスの足の補強用の横木が、ウマくハマらない。組み立て手順を説明する図面では、「左右対称の形状の木が一対」入っているはずに見える。でも、実際には同じ形の木が入っている。僕にはわからない。「梱包が間違っていて、使えない木が入っている」のか、「図面が悪い」のか、「僕の作り方が悪い」のか。

コールセンターに電話して問い合わせてみた。でも、問題は解決しなかった。電話を応対したオペレーターは、態度は丁寧だったけど、手元に僕が持っているのと同じ説明書を持ってるだけで、そのイスを組み立てた経験がないのは明らかだった。結局、僕が知りたかったことは何一つわからないまま電話は終わった。

僕は仕方なく全部一度分解して最初の状態に戻して、もう一度やり直した。そうしたらできた。多分気のせいだったんだろう。(作り方がヘタで、ネジを全部軽く締めてから順番に少しずつキツくしていくべきところを、端からキツく締めてしまった、とかの問題だったのかな、と今からだと想像する)


②テレビのICカードの不良でコールセンターに問い合わせた思い出

もう1つ別の例を思い出してみる。
地デジが導入された頃に買ったテレビに寿命が来たのか、エラーメッセージが出て、映らなくなった。何度か電源をコンセントから抜いてまた入れたりとかすると復活していたのだが、いよいよ映らなくなった。画面にエラーメッセージが出ていて、そのメッセージと説明書を見比べて、ICカードの読み込みに問題があるらしいことが分かった。ICカード自体に、コールセンターの電話番号が書いてあったので、問い合わせてみた。

この時も、問題は解決しなかった。その上、オペレーターはやや横柄な対応だったことを覚えている。

電話して、現状の問題を伝えようとすると、「主電源を切って、コンセントを外し、カードを入れ直して、コンセントを入れ、電源を入れ直してみてください」みたいなことを、命令口調で言ってくる。もうそれは試みたことを伝えると、「問題のない別のテレビに、カードいれて映るかどうか」「問題のない別のテレビから、カードを持ってきて入れて映るかどうか」の2点を試せ、と。それももう試していて、両方ダメだった旨伝える。そこでの結論は、「メーカーにテレビの点検、修理を依頼して」ということだった。

僕としては、「カード」に問題があるのか、「(カードを読み込む)テレビ」に問題があるのかを知りたかったがそれは解決しなかった。特にわかりやすい説明もなかったのであんまり電話をかけた意味はなく、もやもやが残ったまま終わった。

(結局、テレビはジャンクショップに売って、新しいものを買いました)


③コールセンターの立場としては・・・

さて、①②ともに僕が残念な経験をした思い出。共通するのは、「コールセンターに電話で問い合わせる」という時点で、すでに状況としてはあまり望ましくない状態にいた、ということ。クレームを言うつもりはなくても、とりあえず心中としては不機嫌な状態で電話した記憶がある。

そして、「他に方法が思いつかないから、よくわかんないけど試しにコールセンターにかけてみる」という状況も似てる。

思えば、コールセンターで働く身としてはツラいところである。世の中に、「電話で話しただけで解決すること」など限られているのに、「なんかよくわかんないけどこの状況を解決しろよ」と不機嫌な人間が電話してくるのである。

そして(開き直るわけじゃないけど)、コールセンターのオペレーターは、客の要望に関して「無能」としか言えない場合がほとんどだ。(「無能」だと悪意があるかも?「非力」とか?)

例えば、①の「大手の組立家具業者」を想像する。その業者が扱っている家具の種類は、膨大な数になるだろう。そのすべての組み立て方をマスターしようと思ったら、その研修だけで1年はかかるのではないか。しかも、マスターしたところで、電話でそのことを説明できるか? 控えめに言ってかなり難しい。さらに、コールセンターにはあらゆる問い合わせが入ってくるだろう。「注文した商品が届かない」「店員の態度が悪かった」「帰宅してレシートを確認したが、間違ってる気がする」「大きさを間違えていたので返品か交換をしたい」「クレジットカードで支払えるか?」「○○店の営業時間は?」「○○店への行き方は?」など、あらゆる種類の電話がかかってくるのに、「家具の組み立て方」だけを実地で研修してもしょうがない。

だから、「イスの組み立て方をすぐに説明できるオペレーター」を、24時間いつでも電話がつながる状態で待機させる、というミッションは実はインポッシブルに限りなく近い。

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④オペレーターとしての方針

例えば、デパートの1階にいる案内係。その係が、デパートに置いてある商品のすべてを把握して、即答できる状態にあるだろうか? それは、「難しい」より、「不可能」に近いだろう。

だけど、電話をかけてくる人はそこまでイメージが回らない。コールセンターに電話をかけるなんて普段は思いつかないし、電話をかけている時点で「自分が解決したい問題」以外のことを考える余裕がある人はまずいない。

だから、コールセンターのオペレーターは、必ず対応に苦労する運命にある。研修では、「お客様の期待を上回る対応を提供しましょう」などの精神論を繰り返し言われるが、実際には客の期待はコールセンターの業務範囲を超えていることがほとんどだからだ。

客の立場としての僕は、自分でも気づいていなかったが、①の組立家具の件では、「誰かが家に来て僕の代わりに家具を作ってくれること」を、無意識に期待していた。もちろん、そんなサービスがないことは明らかなんだけど、電話をかける時点では、家具ができずに焦っていてテンパってるから、気がつかない。ただなんとなく、高めの期待を抱いて電話するものだ。

だから、オペレーターとしては、どうするか。電話をかけてきた客に、「コールセンターへの期待、予想」の軌道修正をしてもらうよう誘導するのがいい。それなら「難しいけど、可能な範囲のミッション」と言えるだろう。電話をかけてくる人は、「問題がすぐ解決すること」を「なんとなく」期待しているだけで、「本気で」信じているわけではない場合が多いからだ。

ここから先は業種やシチュエーションによって、使えるセリフは変わってきそうなので具体的な言及は難しいが、できそうなことを紹介したい。


⑤「先に謝る」(=予想より早く謝る)

①の組立家具の件では、客が不満を口にしなくても、「説明の図面がわかりにくかったようで失礼いたしました」と謝ってしまえばいい。ポイントは、客より先回りして謝ることだ。そうすると、客は自分の内なる不満をもう持ち出しにくくなる。

②のICカードの件では、「お問い合わせいただき、ご迷惑をおかけしてます」とかでいい。問い合わせる必要が出ている時点で客にとってはバッドな状態なので、そのことをダシにして先に謝ってしまう。ここでも、客が具体的なことを口にする前に謝るのがいいと思う。話が具体化してから謝るより、実はリスクが少ない。(話が具体的なものについては、会社としての責任をどう捉えるかの問題にもつながるので、慎重になる必要がある)

 

⑥話を矮小化して復唱

例えば、「イスの組み立て方について、分からなくなったから教えてほしい」という電話だったら、「イスについてですね?商品番号は何番でしょうか?」というように話を具体化していくのが本来であれば望ましい。でも、これも危険。話が具体化すれば、客としては当然具体的な回答が得られるもの、と期待する。だけど、話の行き着く先は「客自身で説明図を見直してやり直すしかない」のであれば、期待を上げるのはデメリットしかない。

なので実践的には、「弊社の商品について、組み立て方のお問い合わせでございますね?」と、「問題を一段階後退させて復唱」というテクニックをおすすめしたい。こうすることで、コールセンターには「イスの組み立て方」以外にも無数の問い合わせが入ることを、暗にアピールするのだ。電話をかけている方も、無意識に期待していることなので、「即答はできないんだな」と無意識に期待を調整すればいい。

その上で、「手元に図面を用意してまいりますので、少々お待ちください」と、敢えて保留にする。この時点で、客の期待はかなり下がっている。なんなら、「電話かけるだけ無駄だったな」とすら薄々気づいているだろう。オペレーターとしては、この時点からスタートすればいい。保留を、早めに解除する(目安6秒)。客の予想よりやや早く保留を解除して、さわやかに「大変お待たせいたしました」と謝罪。「思ったよりこのオペレーターは感じがいいな」となれば、多少はやりやすく対応できるはずだ。

(※例えば、「商品ごとに組み立て用の動画がyoutubeに用意されていて、商品が特定できれば動画のurlをメールで送れる」みたいな神サービスができる会社であれば別。ここに書いたような小手先のテクニックなど使わずに、実力で勝負すればいいと思います。)


まとめ

・コールセンターに電話をするとき、客は無意識にコールセンターでの対応範囲を上回る期待をしている。

・その期待をいったん下げるように誘導する。

・「先に謝る」「話を矮小化して復唱」が有効。


(以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました)

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