例えばサッカーには「オフサイド」というルールがあって、このルールがなかったら、たぶんサッカーは全然違うスポーツになる。細かくシュミレーションするまでもなく、「中盤を省略した大味なサッカー」がスタンダードになるだろう。
バスケでも同じだ。30秒以内にシュートを打たないといけないルールがある(NBAでは24秒)。このルールがないと、少し差がついた試合では、勝ってるチームが延々とボールをキープして、まったく面白くない試合になってしまう。
このように、「そのゲーム、競技を面白くするために貢献しているルール」がある。というか、ゲームやスポーツの娯楽的な側面を考えるときには、すべてのルールは「面白さ」のためのものだと思う。でも、そのなかでも、「グッとくる」ものがある。思い出して、まとめてみたい。
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・GKへのパス禁止(サッカー)
サッカーでは、フィールドプレーヤーからゴールキーパーにパスをした場合、キーパーは「手でボールを扱っていい」という特権を行使できない。このルールがサッカーに付け加わってから、「勝ってるから、無理しなくていいや。ボールを取られそうになったら、キーパーに戻してやり直し」みたいな時間稼ぎができなくなった。
なので、ボールを奪おうとして前線からプレスをかける、みたいなことが有効になったはずだし、ディフェンダーはただ相手の攻撃を跳ね返す「強さ」だけでなく、中盤や前線の選手みたいなボールの扱いの「上手さ」も問われるようになった。
このルールになんで僕がグっとくるかと言えば、「1行ルールを書き換えるだけで、競技全体を相当エキサイティングなものにした」という功績の大きさを感じるからだ。
・モータースポーツにおける、ファステストラップ
サーキットをグルグルまわるレース。序盤でマシンにトラブルがあって上位入賞が見込めなくなったチームにも、狙える記録があって、それが「ファステストラップ」である(トータルのタイムではなく、1周のラップタイムを競う)。マシンの性能やチームの力をアピールすることができるので、周回遅れの車にも見せ場を用意することができるのがすごい。
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・麻雀の王牌(ワンパイ)
麻雀は、136枚の牌を使って遊ぶ。プレイヤー1人の手牌は13枚。そこに1枚引いてきて(「ツモる」といいます)、「アガリ」の条件を満たす14枚になれるか、または他のプレーヤーが捨てた(「切る」といいます)牌で、「アガリ」となれば他のプレーヤーに得点を払わせることができる。
ここでいう「王牌」というのは、「1回ずつのゲームで、使わないことに決められた14枚の牌」のことを指す。これは、なんというか。「神様に捧げた供物」みたいな感じがするのだ。各ゲームから、14枚は「お供え物」として、誰も使えないものとする。「気品」の感じられるルールなのだ。
自分がノドから手が出るほど欲しかったアガリ牌。相手がそのアガリ牌を見破って切らなかったのであればまだ諦めもつく。でも、その牌が「王牌」に眠っていた時の切なさときたら。詩を詠まずにはいられないような情緒がある。「もとからアガる見込みのない手だったのに、それに気づかずに指に力を込めて無駄ヅモを繰り返していたなんて・・・!」
麻雀の面白さは、「最善を尽くしても勝つとは限らないこと」にある気がしていて、それを象徴する存在として、「王牌」があるのかも、と思っている。
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・アメフトのボールの形
このブログでは、僕は随所でNFLのファンであることを小出しにアピールしている(というより、何かの例を出そうとするとアメフトになってしまうから隠せない)ので、ここでもアメフトから何かひとつ取り上げないと、と思って考えた。でも、これが難しい。細かいルールの集成であるアメフトから、どの要素を1つ取り出してきたらいいものか。
考えた結果、「あのボールの形」が最もドラマを演出しているのでは、ということになった。ラグビーボールと同じ形(やや小さくて、片手でも投げられるのが特徴か)。フォーメーション(プレーごとの陣形)やら、プレーコール(プレーごとのサイン)やらが細かく決められて、「屈強な男たちを使った即興カードバトル」のようなアメフトにおいて、緻密な戦術が見所であるのは言うまでもない。でも、ここであのボールの形がドラマをもたらすのだ。
チーム全体のフォーメーションの読み合いと化かし合い、個人同士の体術と技術の戦いに勝って、ディフェンダーがQBにタックル。ボールを弾き出したとする。ここまではチームと個人の実力だ。しかし、弾き出されたボールがどこに転がるかは、「運命」としか言いようがない。その、絶妙な味付けには、「一流の演出家」の存在を感じずにはいられない。転がりやすく、手につきにくいボールを必死に追う男たちを、運命が弄んでいるように見えるのだ。
世の中にあるいろんなルール。ちょっといじるだけで、ゲームが面白くなったり、つまらなくなったりする。他にもいろいろあるので、近いうちに続きを書こうと思う。
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